2007年1月25日
藤田保健衛生大学医学部  講義の内容



◆病気とわかった時から、すぐ今の様に精力的に活動できたのか?

そりゃ〜無理ですよ。世の中にそこまで強い人間など一人もいませんよ。
すべてを失っていくときに、誰が前向きになれるものですか。
あなたがたに、今、「車イスを覚悟してください。」と言われたら、どう思われるかを教えてください。
(3名あてる)
人間は、失うことが一番つらいことなのですよ。
なぜかわかりますか?
(2人あてる)
いいですか〜?人間は欲の塊なのですよ。欲をすべて断ち切らない限り、失うことが一番つらいことになります。
たとえば、失恋は「恋」を失うことですが、皆さんも経験があるでしょう。
最初の失恋は、胸がはりさけそうなくらいつらかったでしょ。
最初に出くわすことで失うことは死ぬほどつらいものですよ。
でも人間は、学ぶことが出来ますよね。
いつまでも失ったことばかり考えても仕方ないと思うでしょ。
そして、その恋は忘れて、新しい恋人探すでしょ。
ねっ、それもALSも同じことですよ。
私は、全て失いました。身体のことだけでなく、今まで築いてきた社会的な地位、名誉も全てをなくしてしまったのです。
失恋と同じことですよ。失ったことをいつまでもクヨクヨ考えていても仕方ないでしょ。
立ち直るきっかけが私は人工呼吸器をつけたことでした。
今まで息ができなくて苦しかったのに、呼吸ができて楽になった。
苦しいから呼吸を得たことになります。
失うことから初めて得ることができなのですから、私はその時から得ることが、まだ有ることに気が付いて、得られることだけに目を向けられるようになったのです。
それから、現在に至るまで、やりたいこと、好きなことを続けてきただけです。
要は、人間など失ったら、次にできることを考える動物なんですね。


◆前向きになることが出来たきっかけは?

今、述べましたが、人間失いつくしたら、次は選べることに目がいくのですよ。ただそれだけのことです。
私はそのきっかけが人工呼吸器だったのです。
ただ、一人の力だけは、そこまでクールに立ち直ることは出来なかったと思います。そこには、家族が生きてくれることを望んでくれたことと、いつも看護師さんが私を特別視することなく、普通の人間として、笑顔で普通に接してくれたことが、何より励みになりました。私は自分はもう人間ではないと思っていましたし、何のために生きているのか・・・見失っていましたから、そのことは、立ち直るための大きな土台でした。皆さん想像してみてください。
1ミリも身体を動かすこともできずに、天井の模様だけを毎日見続けるのですよ。もし家族がいなくて、看護師さんも実務的な作業だけで、会話もなかったとしたら、私はこの世にいないでしょう。

◆これからの目標・やりたいこと

これには、社会的な面と趣味娯楽的な面と2つあります。
社会的には議員になって弱者を救っていくことです。
マザーテレサのように、平安な心でいたいもんです。
趣味娯楽的には料理の達人になることです。
道場六三郎の門をたたこうと思ってます。マジでっせ〜。
何よりも病気を治すことが最大の目標ですから、3年で治します。


◆衆議院議員になってやりたいこと

現実的には、この身体で東京に国会の時期だけ行くことは不可能ですから、来年の統一地方選挙に照準を合わせていくつもりです。
今、政党の公認が取れるように活動しています。
口約束では公認を得ていますから、本当に現実化させて議員になります。
そしたら、地方からでも弱者を守るために働けますよね。
あと1年あるからがんばります。


◆明るく前向きでいられる秘訣

性格。普通にしてるから、本人はいたってスタンダード。


◆選挙で得たこと

落選。実におもしろかった。高校生の時の学園祭のノリでした。最初からドベはわかっていたから、楽しむだけ楽しみました。
ただ、みんな、選挙には無関心ですね。
教育が間違っていることがあからさまに分かりました。
シリアスなことを知りたい方は、是非ホームページを見てください。


◆愛ライフを設立したきっかけ

ふらふらになって介護する妻を見ているのが辛かった。私を生かすために自分が犠牲になっていました。もう2人とも限界を超えていました。そんなときに支援費制度が始まったのです。私はまず妻を助けるために、愛ライフを立ち上げたのです。妻を助けることができたので、次に私達のように苦しんでおられる方を助けてあげなければいけない・・・と思いました。


◆仕事に対する気持ちの変化は?

私は発病するまではプロの営業マンとして、自分の夢を追って生きていました。発病して身体が動かないこと、そして喋れないことは、営業マンとしては成り立たないし、経営者としても大きなハンディになっています。
私は、自分では何もできませんから、皆様の力をお借りして生きています。仕事は、私の気持ちを本当にわかっていただける方にお任せできるまでに2年半かかりました。私はそういう方に引き継ぐのを私の役目と思っていましたから、ホッとしています。
仕事を健康なときには一人でやりとげていた。と思い上がっていました。
しかし、今考えてみると、皆の助けがあって、そしてお客様がいて、家庭を妻が守ってくれたからこそできたことでした。
今もそうです。仕事はみんなで力を出し合ってのびていくものですね。
でも思い上がって傲慢になると「ホリエモン」になります。お〜こわっ。


◆一番辛いこと

しゃべれないこと。あとは言い出したらキリが無い・・・。


◆あったら良いな。と思う道具や機械

ドラえもん


◆学生へのアドバイス

皆さんは医学部に入ろうとしたきっかけや動機が必ずあるはずです。
「初心忘れるべからず」と言葉になるように、医師になっても周りの雑踏には耳を傾けずに常に目標を持ち、途中で投げ出したり、逃げ出したり、あきらめたりせずに、自分を常に高めてください。
皆さん、医学部は入りたくてもすぐ入れるものではありません。
皆さんは人を救うために、神様が選んだ人ばかりですから、是非皆様の能力を世の中のため、人のために使ってください。そして名医になってください。
しかし、傲慢には決してならないで下さい。「助けてあげた」などと決して思わないでください。「助けていただかせた」と思ってください。
自分のためにも、やっているのです。「助けてあげた」と思う心には、傲慢さがあります。必ず名医ほど、伸びるほど、「頭をを垂れる稲穂かな」です。


◆医者や看護師に対する不満・気付いたことは?

長く仕事をするほど、初心を忘れてマンネリ化してきて、人を見ず、病気を見るようになります。病気とは、「気」を「病む」ことを言いますから、必ず最初に人を見てください。それから病を見てください。
先ほどのアドバイスは一生忘れないでください。


◆現在の医療に感じる良い点と悪い点(介護福祉)

良い点は、技術的には進歩がある「科」が増えてきているが、悪い点は、心を診察する点は何もされていないということです。


◆健常者に期待すること

社会が健常者と、障害者に分けていることに問題を感じる。人間としては、同じくくりであるはずなのに、分けてしまうから、障害者が車イスで段差を越えられなくて困っていても、平気でその横を通り過ぎていく人が多い。
同じ空間で教育が出来ていれば、自然に手が伸びるのに残念である。
相手を思いやる気持ちを健常者にも持ってもらいたい。
自分だけが生きるのに精一杯な人間を作る教育はやめてもらいたい。


◆藤本さんにとってのALS

神様からのプレゼント


◆ALSを発症して得たもののうち一番大切なもの

たこやき
ではなく、「全てを捨てる経験」が得られたこと。普通に生きていたら、欲と執着で捨てられないでしょ。だからALSは神様からのプレゼントなのですよ。


◆トヨタの快進撃をどう思うか。レクサスに乗りたいか?

私が名古屋トヨペットに勤めていた80年代と90年代の真ん中まで、販売力が全てで、経営は保守的でしたが、莫大な資本をもとに視点を海外マーケットに向けたことが最大の強みになった。そのために、F1に参戦したことは、企業のアピールに最大のメリットになっている。トヨタは世界一に君臨し続けることでしょう。
私は昔からジャガーに乗りたい。レクサスはカローラと同じにしか思えない。


◆パソコンの値段

私はいつも1年半落ちのソニーのハイエンドモデルをネットで買っているから、出たときの半値くらいです。



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